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現在の化学のフロンティアは複雑分子系の機能の解明と創出に向かっています。
生体分子系に代表される高い機能を有する複雑系の本質は、大きい内部自由度を持ち、
系が状況に応じて柔軟に変化して最適な機能を発現すること、にあります。
本領域ではこのような複雑分子系を「柔らかな分子系」と呼び、
その機能の理解と制御に向けて、分子科学、生物物理学、合成化学、
理論・計算科学を統合した新しい「分子の科学」の学術領域を拓きます。
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領域を終えるにあたって
2018年3月をもちまして5年間推進してまいりました新学術領域研究「理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学(略称:柔らかな分子系)」がその研究期間を終え、終了いたしました。コアメンバーは2012年の春頃から議論を始めていましたので、それから数えますと実質6年間の研究プロジェクトでした。複雑な分子系の機能を解明するためには理論、計測、創成を専門とする優れた研究者が集うことが必須で、またそれができれば自然に共同研究が生まれ、人的ネットワークができ、これまでにない新しい学術領域が生まれるはずだと考えました。そしてスタートしたのがこの「柔らかな分子系」という新学術領域研究でした。
5年の研究期間はあっという間でしたが、6年前に夢想したかなりのことが実現できたという意味で大きな成功を収めたと考えています。各々の班員の研究で大変優れた業績があがり、この領域で生まれた共同研究で数多くの成果が得られ、またPCCPの特集号に象徴されるように強い国際発信ができました。これらはすべて心から誇れるものですが、「柔らかな分子系」の最も大きな成果はおそらく、この領域の推進によって作られた専門を異にする研究者の間の信頼関係とそれに基づいた人的ネットワークだと思います。
最後になりましたが、「柔らかな分子系」の研究を力強く推進してくださった班員の方々、また本領域をいろいろな立場で支えて下さったすべての関係者の方々に心から御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
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新学術領域研究「柔らかな分子系」領域代表
田原太平
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公開シンポジウム
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<新学術領域研究「柔らかな分子系」>
成果公開シンポジウム 開催のお知らせ
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大盛況のうちに終了致しました。 多数の御参加ありがとうございました。
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ニュースレター 平成 30 年 09 月号を公開しました
【 業績紹介 】
◆高濃度リガンド条件を利用した MD シミュレーションによるリガンドドッキング (ColDock)
◆チャネルロドプシンのチャネル光活性化前駆状態の分子モデルを提案
◆溶液内分子の電子状態理論を用いた定量的 pKa 予測手法の開発
◆3D-RISM 法と分子シミュレーションによる
制限酵素の反応初期過程におけるマグネシウムイオンの役割の解明
◆ゆらぎの定理の応用:回転タンパク質F1 からキネシン・ダイニンによる軸索輸送へ
◆過冷却水において水素結合はどのように破断するのか?:
2 次元自由エネルギー曲面の鞍点を通過しない反応経路の検出
◆好熱菌由来光駆動プロトンポンプTR の発色団構造および多量体安定性に膜環境が与える効果
◆原子間接触を介したタンパク質内振動エネルギー移動経路
◆p53 は天然変性領域を使って二本のDNA の間を高速に乗り移る
◆ナトリウムイオンポンプロドプシン KR2 の反応性・非反応性S1 状態の起源の解明
◆ビニレン基挿入レチナール誘導体による光開閉型プロトンチャネルの創成
◆In-situ 光照射固体NMR によるフォボロドプシンの光中間体の観測とレチナール構造の解明
◆ゲル化過程における線維形成に伴う VCD 強度増大の起源の解明
◆キチン加水分解酵素は熱ゆらぎを利用して一方向に動きながら
結晶性バイオマスを分解する分子モノレールカーである
◆ポリ(置換メチレン)構造によるピレン側鎖の高速なエキシマー形成
◆高速原子間力顕微鏡により明らかにする時計タンパク質Kai の複合体形成の
一分子ダイナミクスと概日周期の安定性
◆第三のロドプシン・ヘリオロドプシン
◆アニオンチャネルロドプシンの構造とメカニズム
◆水中で中赤外の全波数領域をモニターする膜タンパク質の赤外分光
◆光駆動ナトリウムポンプの時間分解赤外分光
◆低温赤外分光による光駆動ナトリウムポンプの細胞質側領域の構造解析
◆内向きプロトンポンプ型ロドプシンの輸送メカニズムの分光研究
◆BLUF ドメインの光反応前後の発色団近傍の水素結合環境を解明
◆ロドプシンの多量体構造の高速原子間力顕微鏡および円二色性分光研究
◆3 次元サンドイッチ型13 核パラジウムナノクラスターの創成
◆"疎水性"ナノ空間による"親水性"乳酸オリゴマーの内包
◆アルキル化アントラセン液体の過冷却現象
◆周期的な構造を有する超分子ヘムタンパク質集合体の構築
◆臓器の低酸素状態を可視化する近赤外蛍光プローブの開発
【 受賞 】
◆A02 班 藤井正明教授が分子科学会賞を受賞
◆A02 公募班水瀬賢太博士 (東京工業大学) が分子科学会奨励賞を受賞
◆A02 公募班 森 俊文博士 (分子科学研究所) が分子科学会奨励賞を受賞
◆横浜国立大学・川村出 准教授が”第 7 回 D アミノ酸学会 奨励賞”を受賞
◆田原グループの坂口さんが日本生物物理学会若手奨励賞を受賞
◆A02 班田原グループの Mohammed Ahmed 博士が ICORS 2018 において
ベストポスター賞を受賞
【 新聞掲載等 】
◆A01 班森田G 城塚達也さんらの論文がカナダのリサーチ会社 Advances in Engineering の 注目論文として紹介されました
「やわらかな分子系」ホームページ更新履歴
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